燃えることで種子をばらまく「バンクシア」とは?


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他の大陸から隔絶されたオーストラリアには有袋類をはじめ、風変わりな繁殖戦略を持った動植物が数多く存在している。

なかでも,燃えることによってはじめて種子がばら播かれるという驚くべき植物が存在する。それがバンクシアだ。バンクシアはヤマモガシ科の常緑低木でオーストラリアの乾燥地帯に多く自生している。70種類あまりが知られており,そのほとんどはオーストラリアにしかみられない固有種だ。


Banksia flowers flickr photo by CazzJj shared into the public domain usingCreative Commons Public Domain Dedication (CC0)
花軸と呼ばれる部分を中心に,複数の細長い花が集まった稲状花序と呼ばれる特徴的な花の配列を持つ。種類にもよるが,毛のようなものが数本集まって1つの花を形成している。

この植物の果実は袋果と呼ばれ,二枚貝のような袋状の硬い殻を持ち,中にある種子を強固に保護している。バンクシアの多くの種では,この硬い殻を簡単に開くことができないようになっている。


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バンクシアの袋果。写真は既に開いていたもの。

この袋果は山火事で燃えることではじめて種子がばら撒かれる仕組みになっているのだ。オーストラリアの乾燥地域では,定期的に山火事が自然発生することで知られている。バンクシアの袋果は山火事による高温状態や含水率の低下などを条件として破裂し,周囲に種子をばら撒く。そして,山火事が終息してから他の植物が燃え尽きた地上にいち早く芽を出すというわけなのだ。

実はバンクシア以外にも,火事などの熱刺激を利用して種子散布を行うような植物は少なからず存在しており,このような種子散布形式はセロティニーと呼ばれている。大自然の脅威を,あえて自らの生命循環に取り入れる――セロティニーはまさに究極の繁殖戦略といえるだろう。

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