スペインの子ども17人が全身から体毛が生える「多毛症」になる、原因は意外なもの


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スペインで、ある奇妙な出来事があった。各地に住む17人の子どもに次々と全身から毛が生えてきたのだ。いわゆる多毛症と呼ばれるこの病気は、通常は伝染することはない。なぜ、子どもたちは同時多発的にこの病気にかかってしまったのだろうか?

多毛症は、何らかの原因によって全身あるいは一部の体毛が過剰に生えてしまう病気だ。男性ホルモンの過剰な分泌によるものや、がんなどの重篤な病気によって引き起こされるものがあり、稀ではあるが先天的な異常によって全身を覆うほどの体毛が生えた症例も報告されている。

今回の異常事態を受け、スペインの行政機関が状況を詳しく調べたところ、ある事実が明らかとなった。多毛症の症状が現れた子どもたちは全員、オメプラゾールという同じ胃薬を服用していたのだ。当局がこの胃薬について詳しく調査したところ、実はオメプラゾールではなく、ミノキシジルという薬であることが明らかになったという。




もしかしたら、一部の人はよくご存じかもしれない。ミノキシジルは、発毛効果があることで知られる発毛剤なのだ。どういうわけか、スペイン南部のマラガにある製薬会社の工場で、ミノキシジルがオメプラゾールと記載されたケースに誤って梱包され、そのまま薬局へと運ばれていたという。子どもたちの全身から体毛が生えた原因は、ミノキシジルによるものだったのだ。

このミノキシジルは外用薬、つまり皮膚につける薬ではないのか?と思うかもしれないが、もともとミノキシジルは高血圧を治療するために開発された内用薬だ。ミノキシジルには血管を拡張させる作用があるため、従来までは血圧を下げる降圧剤として利用されてきた。ところが、副作用として全身から体毛が生える症状が現れたことから、その後は発毛剤および脱毛症の治療薬として使用されることとなったという。

ミノキシジルの発毛のメカニズムについては未だに詳しくは明らかになっていないが、毛組織の血流を改善させ、発毛に関連する細胞を活性化させる効果があるとされている。また、現在でも薬剤の効きにくい重病患者の高血圧治療には、最終手段としてこのミノキシジルが使用されることもあるという。

問題のあった薬は回収され、製薬会社は一時的に操業を停止している。薬品の取り違えは生命に関わるような重大な事故だ。降圧剤としても使用されるミノキシジルは、特に子どもが服用すると場合によっては重篤な副作用が生じる恐れがある。取り違えがあった原因は不明とのことだが、消費者からすれば防ぎようのない事態であるだけに、原因の究明と徹底した再発防止策が求められる。


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エピネシス・コラムズ
・発毛作用のあるミノキシジルには経口薬もありますが、髪だけでなく全身の毛が濃くなってしまう副作用があるため注意が必要です。




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