人工衛星同士の衝突を回避、混雑する衛星軌道


GPM Core Observatory flickr photo by NASA Goddard Photo and Video shared under a Creative Commons (BY) license

ヨーロッパの共同宇宙開発・研究機関である欧州宇宙機関(ESA)はこのほど、ある重大な問題の解決を迫られていた。人工衛星同士が衝突する可能性が浮上したからだ。衝突する危険があったのは、欧州宇宙機関の所有する地球観測衛星「ADM-アイオロス」と、アメリカの宇宙開発企業である「スペースX」の人工衛星だ。この衝突を防ぐために、欧州宇宙機関はADM-アイオロスのエンジンを噴射させ、高度を上昇させて回避に踏み切ったという。

人工衛星はこれまでに8,000基以上が打ち上げられているが、衝突を避けるために
人工衛星が軌道を修正するのはな事態だ。例えば、国際宇宙ステーション(ISS)では1年に1回ほどの割合で、人工衛星などを回避する操作を行っている。私たちが利用可能な宇宙空間は広大であり、さらに異なる軌道ごとに人工衛星が投入されるため、少なくともこれまでは”心配する必要のない”問題であった。



しかし、近年は民間企業が次々と宇宙開発に参入し、その懸念が顕在化しつつある。アメリカの大手IT企業であるAmazonは今年、新たなブロードバンドサービス事業のために3,000基以上もの人工衛星打ち上げる計画を発表しており、スペースX社は「スターリンク」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げ、最終的には1万2,000基もの人工衛星を打ち上げる予定であるという。今回、問題のあった人工衛星は、このスターリンク・プロジェクトに関連する人工衛星であった。

欧州宇宙機関の発表によると、スペースX社の人工衛星と衝突する可能性が浮上したため、スペースX社に接触を試みたが、スペースX社は「衛星を移動させる予定はない」との回答があり、回避操作に踏み切ったという。広大な宇宙といえど、宇宙空間は確実に”混雑化”しつつある。もし衝突していればどうなっていたのだろうか――人工衛星同士が衝突した例が過去に1度だけある。

2009年にロシアの軍事用通信衛星「コスモス2251号」と、アメリカの民間企業であるイリジウム社の通信衛星「イリジウム33号」が衝突したのだ。ロシアの衛星は衝突前から既に活動を停止していたが、衝突における問題は人工衛星の機能停止だけではない。計算によると、この衝突により10cmを超えるようなスペース・デブリ1,000個以上も発生したと推定されているのだ。今後も民間企業による無秩序な人工衛星の打ち上げが行われ、宇宙の混雑化が進めば衝突の危険はさらに高まるだろう。

現在では人工知能を使って衛星同士の衝突を回避するシステムなども開発されているが、宇宙の国際機関、そして民間企業が協調して問題の解決に取り組まなければ人工衛星やスペースデブリはこれからも増え続け、私たち人類が宇宙へ本格的に進出する際に大きな障害となってしまうだろう。宇宙における未来を、他でもない私たちが閉ざすことになってしまうのだ。




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